急に頭がかゆくなって掻きむしると、フケが大量に出てきたという経験がある方は多いのではないでしょうか。

フケは様々な原因で出ますが、

マラセチア菌というカビの一種によるものの可能性があります。

この場合は自宅でのケアだけで改善できないため、クリニックで治療を受けることになります。

ここでは、マラセチア菌による症状と治療法についてご紹介します。

フケが出ている場合、最初に思いつく原因は乾燥でしょう。

ただの乾燥であればマラセチア菌は関係ありません。

マラセチア菌によるフケかどうかを知るために、フケの種類やフケが出る原因を確認しておきましょう。

フケには、乾燥した白い粉のようなフケと、白い塊のべたついたフケの2種類があります。

乾燥したフケは、服の方の部分などについている白い粉です。

ただし、べたついたフケと乾いたフケを合併している場合もあるので、服にフケがついているからマラセチア菌は関係ないとは限りません。

乾燥したフケが出る原因は、頭皮の乾燥です。

頭皮は、空気の乾燥だけではなく紫外線によっても乾燥します。

また、他にも食事や睡眠など様々な要因で頭皮が乾燥するのです。

べたついたフケは、皮脂が過剰に分泌されていることが原因です。

皮脂の分泌は女性よりも男性の方が多く、生活習慣が乱れていると増加します。

脂質の摂り過ぎや運動不足、ホルモンバランスの乱れなども要因となります。

このような状態が続くと、マラセチア菌が増殖するのです。

マラセチア菌はカビの一種で、皮膚の常在菌です。

つまり、普段から皮膚にはマラセチア菌が生息しているのです。

では、なぜマラセチア菌によって頭皮トラブルが起こるのでしょうか。

マラセチア菌は普段は頭皮トラブルを引き起こすことはありません。

しかし、異常に増殖すると皮膚に炎症を引き起こし、さらにフケを悪化させてしまうのです。

マラセチア菌は、皮脂を栄養源にして増殖します。

つまり、皮脂が過剰に分泌されている状態はマラセチア菌が増えやすいのです。

マラセチア菌によって引き起こされた炎症を脂漏性皮膚炎といいます。

脂漏性皮膚炎は強いかゆみを伴うため、頭皮を強く掻きむしってしまいます。

すると、さらに炎症が強くなってフケが増え、かゆみが増すという悪循環に陥るのです。

そのため、できるだけ早くかゆみをコントロールして治療を受ける必要があります。

脂漏性皮膚炎はかゆみが強いため、どうしても掻いてしまうという問題があります。

人前で頭を掻きむしることを避けるために、家に閉じこもってしまうこともあるでしょう。

また、フケが大量に出ていると、脂漏性皮膚炎によるものではなく、しっかり洗髪できていないという印象を持たれることもあります。

このように、脂漏性皮膚炎は生活に支障をきたすこともあるため、できるだけ早く治療することが大切なのです。

フケが悪化すると、薄毛になる場合があります。

フケの悪化によって薄毛になる理由や、薄毛の他の原因について確認しておきましょう。

脂漏性皮膚炎による炎症が強くなると、毛穴に悪影響が及ぶことで毛が抜けます。

また、乾燥したフケの場合でも、抜け毛が引き起こされることがあります。

乾燥したフケが出るということは、頭皮のターンオーバー（生まれ変わりのサイクル）が乱れているということです。

ターンオーバーには、酸素や栄養が必要なのですが、毛の成長にも酸素や栄養が必要です。

つまり、ターンオーバーが乱れているということは、酸素や栄養の供給状態が悪く、髪の成長が阻害されているということになります。

そのため、乾燥したフケが出ている状態では、抜け毛が増えるのです。

薄毛の原因には、生活習慣の乱れやストレス、遺伝などが挙げられます。

薄毛は、このような様々な原因が重なることで起こるものと考えられています。

具体的に、どのようにして薄毛が引き起こされるのかご紹介します。

睡眠中に分泌される成長ホルモンには、皮膚や髪などを成長させる働きがあります。

成長ホルモンが活発に分泌されていることで、髪が順調に発育するのです。

成長ホルモンは22時に分泌量がピークに達し、2時頃にかけてまで髪が最も成長するといわれています。

そのため、夜更かしをしていたり、途中で何度も目覚めていたりすると、成長ホルモンの分泌が低下して髪の成長が阻害されるのです。

血流は自律神経が調節しているのですが、強いストレスを受けると自律神経が乱れてしまいます。

そうすると、頭皮への血流が悪くなり、髪の成長に支障をきたしてしまうのです。

ストレス社会とも呼ばれている現代では、普段の生活の中でストレスを受けることは多いでしょう。

ストレスを溜めないようにすることが大切です。

薄毛の主な原因である男性型脱毛症は、遺伝が関係しているといわれています。

男性ホルモンのテストステロンが頭皮にある5αリダクターゼと結びつくと、ジヒドロテストステロンが作られます。

ジヒドロテストステロンが頭皮の受容体に結びつくことで、脱毛を引き起こすのです。

薄毛が遺伝するといわれているのは、5αリダクターゼの分泌が多いことや受容体の感受性が高いことが遺伝すると推測されているためです。

フケを改善することで抜け毛が増えると思い、過剰にシャンプーをすることで、頭皮が乾燥して余計にフケが増える可能性があります。

また、爪を立ててゴシゴシと洗うと、頭皮が傷ついて症状が悪化することも考えられます。

シャンプーによってフケが増えて余計にかゆくなり、もっとシャンプーをしてしまい、症状がさらに悪化するという悪循環に陥る可能性があります。

マラセチア菌による脂漏性皮膚炎や乾燥フケは日常のシャンプーで予防できます。

正しいシャンプーの方法を確認しておきましょう。

シャンプーには、高級アルコール系と石鹸系、アミノ酸系があります。

これは、皮脂と水を馴染ませるための界面活性剤の種類によるものです。

界面活性剤が含まれているため、皮脂を落とすことができます。

ドラッグストアで簡単に購入できる高級アルコール系シャンプーは、洗浄力が強い石油系の界面活性剤を使用している傾向があります。

洗浄力が強すぎると、頭皮を守っている必要な皮脂まで洗い流してしまい、乾燥フケを引き起こす原因となります。

また、頭皮が乾燥すると、身体がもっと皮脂を出そうとするため、皮脂が増えてマラセチア菌の異常増殖に繋がることも考えられるのです。

石鹸系は、天然由来の界面活性剤を使用しており、高級アルコール系シャンプーよりは洗浄力が低いです。

頭皮との馴染みがよく、敏感肌の人でも使えます。

アミノ酸系シャンプーは、アミノ酸を界面活性剤として配合しています。

アミノ酸は髪や頭皮を構成するタンパク質の主成分なので、馴染みがよいという特徴があります。

また、マイルドな洗浄力で髪と頭皮をやさしく洗い上げ、乾燥を防ぐことができるのです。

ただし、整髪料を使う人や皮脂の分泌量が多い人が使うと、汚れを十分に落せないことがあります。

普段のシャンプーにおすすめなのがアミノ酸系シャンプーです。

乾燥フケを防ぐことができるでしょう。

皮脂の分泌が多い場合は高級アルコール系シャンプーを使ってもよいですが、皮脂の分泌が多い原因が乾燥の可能性もあるので、一度アミノ酸系シャンプーに切り替えてみてはいかがでしょうか。

また、マラセチア菌の異常増殖を予防することを目的とする場合には、カビに効果が期待できる抗真菌剤を含むシャンプーを使ってもよいでしょう。

毎日使うことで、マラセチア菌の異常増殖を防ぐ効果が期待できます。

汚れを落としたいからと言って、ゴシゴシと洗っている方もいるのではないでしょうか。

必要以上に洗う行為は、頭皮を外的刺激から守っている必要な皮脂までも落とし、頭皮を刺激することで炎症を引き起こします。

また、熱すぎる湯で洗うことも避けることが大切です。

熱すぎる湯で洗うと必要な皮脂までも溶けるため、正しく洗っていても頭皮が乾燥してしまいます。

それでは、正しいシャンプーの方法を確認していきましょう。

まず、髪を濡らす前にブラッシングでホコリを取り除きます。

このときに、髪のもつれを解消しておくと、洗っているときに指で引っ張ってしまうことを防げます。

次に、ぬるま湯でしっかり頭皮と髪を濡らしましょう。

十分に濡れていない状態でシャンプーをしても、しっかり泡立ちません。

また、頭皮にシャンプーが直接ついてしまうと刺激になります。

シャンプーは手のひらでしっかり泡立てて、十分に濡れた頭皮と髪につけましょう。

指の腹でマッサージするように洗ってください。

爪を立てると頭皮が傷つくので注意しましょう。

そして、ぬるま湯でシャンプーをしっかり落としてください。

洗浄成分が頭皮に残ると刺激になります。

耳の後ろや生え際にはシャンプーが残りやすいため、入念にすすぐことが大切です。

髪を乾かさずに寝てしまう方もいますが、湿った環境は雑菌が増殖しやすいため、マラセチア菌による頭皮トラブルの原因となります。

また、皮脂の分泌をコントロールするには、正しい方法で髪を乾かす必要があります。

頭皮に近すぎる距離でドライヤーを当てると、頭皮が乾燥してしまいます。

すると、身体がもっと皮脂を出そうとするため、結果的に皮脂が過剰に分泌されるのです。

また、ドライヤーの温風を髪に当てすぎると、キューティクルが剥がれてダメージヘアの原因となります。

正しい方法でシャンプーをしても、乾かし方を間違えていると皮脂の分泌が増えてしまうので、正しい乾かし方について確認しておきましょう。

ドライヤーの前にタオルドライで髪をある程度乾かしましょう。

そうすることで、髪や頭皮がドライヤーの温風に晒されている時間を短くできます。

タオルドライでは、吸水性が良いタオルで髪を挟み、軽く叩いて水分を吸い取りましょう。

ゴシゴシと擦ると、髪のキューティクルがダメージを受けてしまうので注意が必要です。

ドライヤーは、水分が残りやすい髪の根本から当てていきましょう。

髪から約20cm離して、ドライヤーを左右に振りながら当てます。

同じところに温風を集中して当てるとダメージヘアや頭皮の乾燥を招くので注意しましょう。

また、乾かしすぎると頭皮までも乾燥する恐れがあるので、全体の90%程度が乾いたところでドライヤーをやめて、自然乾燥させることがポイントです。

ヘアトニックなどを使って頭皮マッサージをしましょう。

頭皮の血行が促されることで、髪の成長に良い影響を与えられます。

また、健やかな頭皮環境を保つことにも繋がるでしょう。

こめかみに親指を当てて、全体的にマッサージしていきます。

また、頭を掴むようにして引き上げることも効果的です。

シャンプーと一緒に見直したいことが生活習慣です。

正しい方法でシャンプーをしたりマッサージをしたりしても、生活習慣が乱れていると頭皮環境が乱れてしまう可能性があります。

頭皮の健康に関係しているのは、睡眠や食生活、喫煙、ストレス、運動などです。

これらを全て見直して、正しい方法でシャンプーをすれば、マラセチア菌が増殖しにくい頭皮を保てるでしょう。

具体的に、次のように見直してください。

深い眠りに入っているときには、細胞を修復したりストレスを解消させたりする成長ホルモンが分泌されます。

そのため、途中で何度も起きてしまうような質の悪い睡眠は、ストレスによる皮脂の過剰な分泌を招くのです。

また、身体の様々な機能を調節している自律神経が、睡眠不足の影響で乱れることも皮脂の過剰な分泌に繋がります。

自律神経のうち交感神経が乱れると、男性ホルモンが増えて皮脂の分泌が促されるのです。

寝る前にスマホやテレビなどの強い刺激を受けると、眠気を感じるときに分泌されるメラトニンというホルモンの分泌が抑制されるといわれています。

寝る前は刺激を避けて静かに過ごしましょう。

カロリーの過剰摂取は、皮脂の分泌を増加させます。

普段から、脂っぽいものや甘いもの、刺激物などを頻繁に食べている場合は、できるだけ控えるようにしましょう。

緑黄色野菜には、ビタミンB2やビタミンC、食物繊維などが含まれています。

ビタミンB2とビタミンCは脂質の代謝に役立ち、食物繊維は便通を改善することで糖質や脂質の排泄を促します。

また、青魚に含まれるDHAやEPAは、脂質の代謝に役立ちます。

肉中心の食生活の場合は、肉の代わりに青魚にして、野菜をしっかり摂りましょう。

また、1日3回の食事をしっかり摂ることも大切です。

1回の食事を減らして、次の食事で大量にカロリーを摂ると、体内でカロリーを使いきれず、余分な脂質として皮脂の分泌が増加します。

ストレスを受けると、血流が増加するアドレナリンとノルアドレナリンが分泌され、皮脂の分泌までも増加します。

さらに、ストレスに対抗するコルチゾール、副腎から分泌されるアンドロゲンというホルモンの影響でも皮脂の分泌が促されるのです。

つまり、皮脂を増やさないためにストレスのコントロールはとても重要ということになります。

ストレスと言えば、人間関係の問題などからくる精神的なストレスを想像するかもしれませんが、気温の極端な変化や騒音、細菌感染などもストレスになるのです。

好きなことをして過ごしたり、しっかり睡眠をとったりして、ストレスを少しでも解消させましょう。

タバコを吸うと交感神経が刺激され、男性ホルモンが増加します。

また、ストレスに対抗するコルチゾールも増えるのです。

いずれも皮脂の分泌を促す原因となるため、できるだけ喫煙を控えることをおすすめします。

また、タバコに含まれるニコチンには、血管を収縮させることで血流を低下させ、頭皮への栄養の供給を阻害する作用があります。

栄養の供給が低下すると、頭皮の生まれ変わりのサイクルが乱れ、皮脂の分泌が乱れてしまうのです。

さらに、脂質の代謝を促すビタミンCを大量に消費することも皮脂の分泌が促される理由の一つと考えられます。

お酒は高カロリーなので、毎日のように飲んでいるとカロリーオーバーによって皮脂の分泌が増えます。

また、お酒を飲むとよく眠れると思い、毎日のような寝る前に飲酒している方もいるのではないでしょうか。

実は、寝る前の飲酒は睡眠の質を低下させて、皮脂の過剰な分泌を招く原因なのです。

アルコールは、摂取後2～3時間でアルデヒドという成分に変化します。

アルデヒドは交感神経が刺激する作用があるため、身体が興奮状態になって睡眠の質が低下するのです。

また、利尿作用もあるため、夜中にトイレに行くことで睡眠不足になるという問題もあります。

お酒を飲まなければ寝つきが悪い場合には、ストレスが原因の可能性があります。

ゆっくり湯船に浸かる、マッサージをするなどしてストレスを少しでも解消させましょう。

どうしてもフケが治まらない場合には、一度クリニックを受診した方がよいでしょう。

クリニックで受けられる治療法についてご紹介します。

フケの原因はマラセチア菌の異常増殖とは限りません。

そのため、医師の診察を受けてフケの原因を突き止めることが大切です。

マラセチア菌によるフケではない場合には、生活習慣の改善指導などを受けられるでしょう。

マラセチア菌による脂漏性皮膚炎に伴うフケの場合には、主に薬物療法を適用します。

基本的には、ステロイド外用剤を使用します。

比較的短期間の使用で症状の改善が期待できます。

頭皮には軟膏を塗ることが難しいので、液体のローションを使用することが一般的です。

なお、ステロイド外用剤には副作用があるため、長期的な使用による問題を避けるために、比較的弱めのステロイド外用剤を使用します。

ステロイド外用剤の副作用は、皮膚の毛細血管が太くなることで透けて見える、産毛が太くなる、皮膚が薄くなることで刺激に弱くなることなどです。

内服薬とは違い、骨粗しょう症のリスクが上がったり身体の中心に脂肪がついたりするといった副作用はないので、過度な心配はいらないでしょう。

しかし、ステロイド外用剤の使用をやめると脂漏性皮膚炎が再発することがあります。

そのため、マラセチア菌に効果が期待できる抗真菌外用剤を併用することが多いです。

効果が現れるまでに時間がかかる他、重症の脂漏性皮膚炎には高い効果が期待できないなど問題もありますが、副作用がほとんどみられないため長期的な使用が可能です。

また、軽症例の他、再発を防ぐ目的で使用されることもあります。

他にも、マラセチア菌の増殖を防ぐことを目的として、皮脂の分泌を抑えるビタミンB2やビタミンB6を使用することもあります。

脂漏性皮膚炎の症状の程度によって治療法が異なるので、まずは医師の診察を受けましょう。

マラセチア菌が増殖するような頭皮環境では、薄毛にもなっている可能性があります。

薄毛の主な原因は男性型脱毛症ですが、これは男性ホルモンの影響で髪の成長が阻害されることで起こります。

また、生活習慣が乱れていることで頭皮環境が悪くなり、薄毛になる場合もあるのです。

男性ホルモンの影響による薄毛の場合は、クリニックで治療を受ける必要があります。

生活習慣を改善しても男性ホルモンによる影響は止められないので注意しましょう。

クリニックで受けられる薄毛の治療法は、薬物療法やメソセラピーです。

薬物療法では、男性型脱毛症を引き起こすジヒドロテストステロンの生産に必要な5αリダクターゼを阻害するフィナステリドを使用します。

また、メソセラピーは頭皮に薬剤を注入する治療法で、ミノキシジルなど血管を拡張させて髪の生成を促す成分の他、発毛力を取り戻す成長因子を使用することもあります。

マラセチア菌は皮膚の常在菌です。

普段は他の雑菌との均衡を保っているため、頭皮に問題を起こすことはありません。

しかし、何らかの原因で皮脂が過剰に分泌されると、マラセチア菌が皮脂を栄養源にして増殖するのです。

べたつきのある脂っぽいフケや頭皮の赤みなどが起こり、悪化すると炎症が起きた部分の毛が抜けることもあります。

マラセチア菌について重要なポイントを以下にまとめました。

【チェックリスト】

・脂漏性皮膚炎はステロイド外用剤などで治療する

・生活習慣を見直して予防することが大切

・男性ホルモンによる薄毛を合併していることもある

・シャンプーで予防が期待できる

・マッサージで頭皮環境を整える

マラセチア菌は、ステロイド外用剤と抗真菌外用剤によって治療できます。

長期的にステロイド外用剤を使用することで副作用が懸念されるため、抗真菌外用剤と併用することが多いです。

また、生活習慣を改善したり抗真菌外用剤を含むシャンプーを使ったりすることも効果的とされています。

脂漏性皮膚炎は大量のフケが出ることで生活に支障をきたすこともあるため、早めに治すようにしましょう。